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斎藤環著『社会的ひきこもり 終わらない思春期』を読む(第2回)

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斎藤先生は、「社会的ひきこもり」を特定の精神的病気が引き起こす結果であるとみなす一部の見解を完全に否定しています。

<社会的ひきこもりに伴うさまざまな症状は、しばしば二次的なものです。つまり、まず「ひきこもり状態」があって、この状態に続発する形で、さまざまな症状が起こってくるということです。>

「社会的ひきこもり」は、思春期に独特の葛藤のパターンを何年も抱き続けている結果として起こることが多い、と斎藤先生は言い、以下のような理由をあげています。

<不登校、家庭内暴力、強迫症状、対人恐怖症状などの、思春期心性と深く結びついた症状>

<ひきこもりが長期化する背景には、視野の狭さ、かたくなさなどといった思春期独特の考え方や、自己愛的な構えがあることが多い>

<本人はみずからの置かれた状況を客観的に捉えるだけの余裕がなく、したがって治療を拒否することがほとんどである>

<長期にわたる事例でも、慢性化による症状の安定化が起こりにくく、したがって治療を拒否することがほとんどである>

斎藤先生の病院で診療した患者の分析結果にもとづくと、「社会的ひきこもり」には以下のような傾向があると言います。

<調査時の平均的ひきこもり期間は39ヶ月(3年3ヶ月)。

・圧倒的に男性が多い。

・とりわけ長男の比率が高い。

・最初に問題が起こる年齢は、平均15.5歳。

・最初のきっかけとしては、不登校が68.8%ともっとも多い。

・問題が起こってから治療機関に相談におとずれるまでの期間が長い。

・家庭は中流以上で、離婚や単身赴任などの特殊な事情はむしろ少ない。>

「社会的ひきこもり」が長期化すると、どんな現象が起こってくるのでしょう。

<ひきこもり状態は、この退行をしばしば引き起こします。退行とは、成長した個体が、発達段階より未熟な状態に逆戻りすることを意味しています。いわゆる子ども返りです。>

<退行が問題なのは、これがしばしば暴力につながるためです。家庭内暴力のほとんどは、退行の産物です。>

<感情の不安定性、とりわけ抑うつ気分も、しばしば見られる症状の一つです。調査結果では、慢性的に気分の変動が激しいものが31%、軽度の抑うつ状態がみられたものが59%を占めていました。また、抑うつとは微妙に異なりますが、絶望感、希死念慮、罪悪感は、軽度のものは53%が経験していました。>

<うつ病の患者さんは、しばしば「何もかも手遅れで取り返しがつかない」と考えています。しかし、ひきこもりの事例では、「1日も早く、何としてでもやり直したい」という葛藤を抱いていることが多い。>

そして斎藤先生は、この葛藤にこそひきこもり脱出の鍵があると考えているのです。

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